06.12
2015 NEWS

アンティ・シーララから、リサイタル・プログラムへのコメントが届きました!

2015年6月30日(火)19:00 浜離宮朝日ホール

シューマン:『ダヴィッド同盟舞曲集』op.6
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 op.110
スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 op.70

料金 全席指定5,500円 学生3,000円
*学生券のお取扱いはパシフィック・コンサート・マネジメントのみです。

主催:朝日新聞社/パシフィック・コンサート・マネジメント


<プログラム・コメント>

 シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」は、私がもっとも好きな作品のひとつであり、ロマン派の時代の中に存在する素晴らしい作品のひとつです。この作品には、シューマンがまだ若くピアノ作品の黄金期を築いていた頃の、すべてのテーマが登場します。「フロレスタン」と「オイゼビウス」(いずれもシューマンが作り出した2つのキャラクター)が、作品の中で交互に話しかける様子や、詩、クララとの結婚への興奮、そして不思議な演奏指示など、多くの要素が表現されています。これらのすべてが、退屈することなく一つの音楽の旅に集約されているのです。
 後半はもっと抽象的な作品を演奏したかったので、最新のCDにも録音したベートーヴェンのソナタを選びました。後期のソナタ3曲の中では、この作品110はもっとも私的で深奥な作品であり、その意味でおそらくシューマンの世界観とどこか共鳴するものがあるのです。有名な最終楽章の「嘆きの歌」とフーガの並置は、ベートーヴェンの作品の中でもとりわけ特異な部分です。ここでは、彼は自身の魂をすべて剥き出しにして、古いフーガの形式の美しさと安定感の中に希望を見出そうとしたように思います。
 ベートーヴェンのソナタ作品110の後には作品111のソナタがよく演奏されますが、今回は代わりにスクリャービンのソナタ第10番を演奏します。これら2つの音楽はまったく違う言葉を話しますが、どこか似たところが感じられます。これらは、いずれも尊敬すべきスクリャービンとベートーヴェンが残した最後のソナタである上に、どちらの曲でもトリルが中心になり曲の象徴的役割を担っています。ベートーヴェンのソナタ作品111の第2楽章「アリエッタ」の部分で表現されている、まるで別世界のような極めて優美な心情は、スクリャービンの作品と共通しています。スクリャービンの神秘主義は、私が2曲目に演奏するベートーヴェンのソナタで表現されている個人的感情との、興味深い対比を生み出しています。この作品のクライマックスはとても壮大で、それはおそらく世界の終焉に関するスクリャービン独自のファンタジーと結びついているので、この作品の後に何か違う曲を演奏するのがとても難しく感じるのです。
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